経営者が病気やけがによる就業不能リスクを保険で対策する
現代の日本では、中小企業の経営者の高齢化が問題となっています。
後継者不足により、事業承継もできず経営を続けているものの、高齢化に伴って病気やケガのリスクも高くなります。
経営者が病気やけがによって入院し、就業不能状態になった場合はどのような経営リスクがあるのか、解説します。
経営者が就業不能になった場合の経営リスク
中小企業の経営者は、年々高齢化が進んでいます。
経営者の年齢を見ると、ボリュームゾーンが66歳、平均では68歳前後となっていて、病気やけがのリスクも高くなっています。
経営者の年代が高くなり、病気やケガによる入院のリスクが高くなってしまった場合は、様々な経営リスクが生じてしまいます。
主な経営リスクは、どのようなものがあるでしょうか?
まず、経営者が就業不能となってしまった場合は、半数以上の企業で売り上げが減少しています。
しかも、売り上げが約半分になった企業が最も多いのです。
特に減少しやすいのが、経営者が40代のケースです。
40代以下の経営者が就業不能となることはあまり想定していないため、会社の運営がうまく働かなくなったという可能性が高いでしょう。
特に、社長が現場で動き、率先して営業を行ってトップセールスだったという場合は、影響が大きくなります。
元々社長が1人で始めた会社で、徐々に従業員が増えていった場合には社長の影響が大きくなる傾向があります。
売上が減少した場合は、借入金返済力の低下も懸念されます。
社長が入院して就業不能となってしまうと、売り上げが減少して返済が不可能になるかもしれません。
また、固定費の支払いも滞る可能性があります。
就業不能に備えた保険への加入
経営者が入院して就業不能になると、会社も存続の危機を迎えてしまうかもしれません。
会社を守るためには、保険に加入して減少した売り上げを補うことが求められるでしょう。
従業員が働けなくなった場合は、様々なセーフティネットがあるのですが、経営者の場合は会社を守る必要があるため、公的保険だけでは不十分です。
民間の保険会社の保険に加入して、備えておきましょう。
労災保険については、通常であれば経営者は対象外となるものの、一定条件を満たしていれば特別加入制度というものもあります。
特別加入が認められるのは、労働保険事務組合に労働保険の事務処理を委託していて、労働者が一定人数以下の場合です。
ただし、特別加入をするためには保険料以外に、手数料と年会費を支払わなくてはいけません。
費用対効果を考えて、加入を検討してください。
経営者向けの保険は、今までであれば死亡保険が一般的でした。
経営者に万が一のことがあって急死した場合に備えて、事業承継対策と共に死亡保険に加入し、死亡することがなければ経営者の退職金準備として加入する商品が選ばれていたのです。
また、入院が必要な場合や手術を受けることになった場合は、法人向けや個人向けの医療保険に加入することでカバーしていました。
しかし、近年は就業不能保険が注目されていて、加入者も増えているのです。
就業不能保険は、登場したのがごく最近なので、詳しく知らないという人もいるでしょう。
また、就業不能というリスクがどのようなものか、詳しく知らないという経営者も少なくありません。
しかし、死亡リスクと就業不能リスクを比較した場合、就業不能リスクの方が高いため、経営者は死亡よりも就業不能になることに備えておく必要があるのです。
単に死亡するよりも、病気やけがで入院するリスクが高いのは当然でしょう。
経営者が就業不能になった場合に必要となる保障は、従業員が必要な保障とは異なります。
また、同じ経営者であっても、事業内容や業務への関わり方などで細部は異なるでしょう。
最低限必要となる保障内容は、まず事業を存続させるために必要な当面の運転資金があります。
会社の売り上げに大きく影響する可能性が高い場合は、持ち直すまでの間の経営に必要な資金が必要となるでしょう。
また、就業不能の状態から回復すればいいのですが、もし引退する必要がある状態になった場合は事業承継が必要になってしまいます。
事業承継対策として、必要保障額も用意しなくてはならないでしょう。
経営者が引退する場合の退職金も、保険で賄えるようにしておくと確実に受け取ることができます。
必ず必要というわけではありませんが、できれば保障に加えておくと安心できるでしょう。
ただし、経営者が不在になった場合でも売り上げに影響がなく、代理となる後継者がいる場合は運転資金や事業承継対策などの保障は不要です。
保障する内容を少なくすることができれば、保険料も安くなります。
就業不能だけではなく、死亡時にも備えることができる保険もあります。
例えば、45歳に加入して75歳で保険が満了する保険で、特に問題なければ満期保険金を受け取ることができ、加入期間中に高度障害状態や要介護状態になった場合、あるいは死亡した場合に保険金を受け取ることができる、という商品も用意されているのです。
保険の特徴として、法人契約であれば支払った保険料の全額、もしくは一部を損金として扱うこともできます。
損金に算入することで、実質負担額も減額されることとなるのです。
就業不能保険に求められる保障は、死亡保険と医療保険の中間にあたるものです。
実際に入院して手術を受けた場合、翌日から元のように働くことができる人はいないでしょう。
もし入院したときはどのような保障が必要か、入院した日数に応じて必要となる保障内容を考えて、希望する保障内容を満たす保険はどのような保険か、毎月の保険料はどのくらいになるのか、法人契約が可能かどうかを、きちんと相談したうえで保険の加入を検討しましょう。
まとめ
中小企業の経営者が高齢化している昨今は、経営者が病気やケガで入院することで就業不能となるリスクも高くなっています。
経営者の就業不能リスクに備えて、近年増えつつある経営者向けの就業不能保険への加入も検討する必要があるでしょう。
どんな保障が必要かをよく考えて、必要な保障を満たしている保険を探し、保険金と保障内容の釣り合いを考えつつ加入を検討してください。