中小企業の重要な課題としての事業承継に対しての準備

中小企業にとって、事業承継は喫緊の問題となっています。

経営者が高齢化しているため、後継者を早く見つけなければ万が一入院になった時などに、事業が止まってしまうかもしれないのです。

しかし、後継者を見つけるだけではなく、事業承継の準備も進めていかなければいけません。

どのように準備するべきか、解説します。

目次

何を引き継ぐかの整理

事業承継を行う上でまず覚えておきたいのが、事業承継はすぐにできる物ではない、ということです。

中小企業相の事業承継ガイドラインに記載されている、事業承継計画を確認しながら準備を進めていきましょう。

事業承継では、大きく分けて5種類の資源を引き継ぎます。

5種類の資源とは、ヒト、モノ、カネ、情報、知的財産のことです。

具体的には、どのようなものでしょうか?

ヒトというのは、労働力や創造性、技術力など、従業員などの人が関わることで生み出されるものです。

経営者が変わったからといって、ヒトが変わるとは限りません。

モノは、設備や不動産などの事業用資産、事業で製造・販売している商品、提供しているサービスなどを指します。

事業用資産がなければ、承継したとしても事業を続けることは困難でしょう。

カネは、事業用の資金や株式などを指します。

事業には運転資金が必要なため、社内留保などを含めて事業とともに承継されることとなるでしょう。

情報は、取引先のデータやネットワーク、顧客のデータ、研究によって生まれた成果などのことをいいます。

データがなければ、事業を今まで通り続けることは困難になります。

知的財産は、特許を含む知的財産権や企業理念、ブランド、人的資産、組織構造などがあります。

資産とは異なり、形がないものなので、丁寧に承継する必要があります。

事業承継の準備というと、資産を経営者から後継者へと譲る際の相続税対策をまず考える人が多いのですが、相続税対策は必要な準備の中の一部に過ぎません。

事業承継で特に苦労することが多いのは、知的財産権の承継です。

ブランドや企業理念などは形がないもので、知的財産権と認識していないケースも少なくありません。

当事者にとっては当たり前のことであり、承継の際に気づかず手続きをしないことも珍しくないのです。

知的財産は、企業が持つ競争力の源泉です。

一番いい形で承継するにはどうしたらいいのか、競争力をさらに高めるには何が必要かを、時間をかけて取り組んでいく必要があります。

承継のパターンごとの特徴

事業承継は、後継者に事業を承継してもらうことですが、パターンとしては親族への承継、役員や従業員への承継、社外への引き継ぎの3つのパターンがあります。

それぞれ、承継する際の特徴を解説します。

親族に承継する場合は、早期の段階で後継者教育を始めることができるため、不足することがないよう備えることができるでしょう。

また、十分な教育を施すことができた段階で、事業承継ができます。

また、経営者の子供などに相続させる場合は、内外の関係者も心情的に受け入れやすいでしょう。

財産や株式なども、相続という形で後継者に移転することができます。

ただし、後継者候補が承継する意思を持ち、経営能力を持ち合わせていないケースも考えられます。

後継者候補が複数いる場合は、後継者以外の相続人への配慮も必要となるでしょう。

会社で働いている従業員などに承継する場合、すでに勤めているため経営方針なども把握しているでしょう。

ただし、派閥などができた場合は注意が必要です。

社外への引き継ぎは、M&Aなどの手法があります。

身近に適した後継者がいない場合も、候補者を外部に備えることができます。

事業売却であれば、経営者は会社を売却した代金を受け取ることができるでしょう。

中小企業の経営者の中には、M&Aについての知識がなく、損をしないかと不安に思っている人もいるかと思います。

M&Aには仲介専門の会社や、アドバイザー協会などがあるので、一度相談してみてください。

また、事業承継には経営承継円滑化法に基づいた総合的支援があるため、わからないことがあった場合に備えて知っておいた方がいいでしょう。

支援内容を事前に把握しておき、自社の状況に合わせて計画を立てていきましょう。

具体的な支援内容としては、まず遺留分に関する民法の特例があります。

相続の際に、株式が分散してしまうことがあるのですが、あまり多く分散してしまえば経営に支障が出ることもあるので、未然に防止することなどをいいます。

2つ目は金融支援で、直接貸してくれるのではなく信用保証枠を実質的に拡大してくれるケースなどがあります。

3つ目は事業承継税制の支援で、事業承継に伴って発生する贈与税や相続税の納税の免除や猶予などがあります。

元々は法人が対象だったのですが、2019年からは個人事業の承継についても対象に含まれるようになりました。

承継した後継者が重度の障害によって事業継続が困難となった場合は、納税が免除されます。

ちなみに、事業承継の割合としては、男性の子どもがほとんどを占め、親族内承継は全体の55%と過半数が親族内承継を行っています。

役員や従業員への承継、社外への引き継ぎはどちらも20%未満となっています。

事業承継はすぐには終わらない

事業承継の準備をしたら事業承継を実際に行っていくことになるのでⓈが、事業承継というのはすぐに終わるものではないので注意してください。

必要な期間を知って、あらかじめ準備しておく必要があるでしょう。

親族内承継はゆっくりと教育しながら継承するため、時間がかかるのは当然ですが、社外への引き継ぎなど教育が必要ない場合も、1年以上かけて引継ぎをすることになるのです。

一般的に、事業承継には育成機関を含めて、短くても5年、長ければ10年以上かかると言われています。

時間がかかるのは当然のものと考えて、事前に長期的な計画に基づいた準備をしっかりとしておくことが大切でしょう。

まとめ

中小企業では後継者不足に悩んでいる企業も多いのですが、後継者候補が決まっている場合でも気を付けなくてはならないのが事業承継の準備です。

事業承継の準備は、相続税などの税金に備えるだけではありません。

何を引き継ぐのかを詳細に把握し、特に知的財産権については漏れがないよう徹底的にチェックしておかなくてはいけません。

どのような形で承継するのかで対応が異なるため、正しく対処しましょう。

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