売掛金が何ヶ月も回収できない状態によるリスク

会社間の取引では、売り掛けでの取引が当たり前です。

しかし、取引先が期日になっても支払われないと、未回収の売掛金ができてしまいます。

短期間ならいいのですが、何カ月も回収できないようになれば、どのようなリスクがあるでしょうか?

回収できない場合のリスクについて、解説します。

目次

売掛金が未回収になるケースは?

商品を購入する時、通常であればお店に並んでいる商品の中から購入を希望するものを選び、代金を支払って購入します。

代金を支払い、商品を受け取った時点で取引は完了です。

しかし、企業間の取引では逐一代金を支払わず、後日支払うことがあります。

取引が一度で終わる場合であればともかく、1カ月間に複数回の取引をする場合などは、後日まとめて請求するのです。

代金をまだ受け取っていない状態で商品を渡した時、代金は売掛金となります。

売掛金は、通常数カ月以内に支払日を定め、期限までに支払うのです。

しかし、中には支払日までに売掛金の支払い分が用意できず、返済が遅れることがあるでしょう。

期限を過ぎってしまったときは未回収となるため、回収に動かなくてはいけません。

未回収になってしまう原因としては、まず取引先が入金を忘れるなどのミスをしたケースが考えられます。

入金処理をする書類から漏れていた、別のところに紛れていた等、単純なミスは珍しくないでしょう。

事前に確認しておけば避けられるミスではありますが、問い合わせがあったわけでもないのに支払日を繰り返し連絡するというのは、遅れることを疑っているようで失礼にあたります。

過去に何度か遅れたことがない限り、いちいち連絡することはないでしょう。

場合によっては、ミスが原因ではなく支払い能力が不足しているというケースも考えられます。

経営状況が悪化した場合などで、支払うお金が足りないというケースです。

経営状況の変化は、付き合いがあれば多少は察することができるでしょう。

疑わしい場合は、貸し倒れになることを防ぐために支払いがいつまでにできるかを約束し、きちんと書面で残したうえで売掛での取引をやめるなどの対処が必要となります。

特に経営状況には問題がなく、支払日も把握しているのに、わざと支払わないというケースもあります。

特に、新規で取引をしている場合にあり得ることです。

故意に支払わないというのは、詐欺と考えられても仕方がありません。

取引を開始する前に、取引先の情報を集めて信用力を把握して、取引額や取引方法を考えるようにしましょう。

売掛金が何カ月も未回収となるリスク

売掛金が未回収となったとしても、すぐに回収できた場合は影響が少ないでしょう。

しかし、何カ月も未回収になってしまったときは、様々なリスクが生じてしまうことになるのです。

具体的には、どのようなリスクが考えられるでしょうか?

売掛金は、商品などを納品した代金が支払われていない状態です。

つまり、商品を製造する費用はすでに発生しています。

原材料費や設備費、人件費、電気代、輸送費等、様々な項目で商品に関係する支出があるのです。

売掛金がある状態では、自社で商品の代金を負担している状態です。

商品の代金は、新たな商品の製造費用や従業員の給与、会社の維持費、新たな商品の開発など、様々な事に使われるのですが、何カ月も支払いが無ければ支払われるまでの期間は自社の持ち出しとなってしまいます。

単純に考えて、A社との取引で全ての商品が売れ、1億円の売掛金があるとします。

しかし、翌月に支払われるはずだった売掛金が、3ヶ月経っても支払われないため、自社では、代金が支払われないため新たな製品を作成する資金がなく、従業員に支払う給与も銀行から借りて用意することとなりました。

5か月後にようやく支払われたとしても、支払われるまでの間は製品を製造することができなかったため利益がなく、従業員への給与だけが支払われるという状態となり、大赤字です。

また、銀行から借りた分には金利が付くので、金利分も余分な出費となります。

極端な例ではありますが、中小企業やベンチャー企業などの中で、資金に余裕がない企業の場合はあり得ない事ではありません。

完全に止まることはないとしても、製品の製造や開発などは縮小されてしまう可能性が高いでしょう。

一度無理が生じてしまえば、回復するには時間がかかります。

場合によっては、取引先が倒産してしまい売掛金を回収することができなくなったため、自社も倒産してしまう連鎖倒産が起こるかもしれないのです。

売掛金の時効に注意

未回収の売掛金を抱えている企業が最も気をつけるべき点は、時効です。

実は、売掛金には時効があるのです。

時効は、2020年4月以降に発生した売掛金は5年、3月以前に発生した場合は代金の内容に応じて1年から3年と民法で定められているのです。

時効が成立してしまえば債権は消滅してしまうため、売掛金は回収できなくなるのです。

ただ黙ってみていれば、時効を止めるすべはありません。

しかし、時効をストップ、あるいはリセットする方法はあるのです。

まず、売掛金回収のための訴訟を起こしたり、支払督促を行ったりした場合等、裁判所を通じて手続きをすると、時効がストップします。

権利内容が確定すれば、時効がリセットされて再びカウントが最初からになります。

しかし、訴訟や支払督促などの手続きをするには時効の成立まで時間がない、というケースもあるでしょう。

時間がない時は、催告書を作成して配達証明が付いた内容証明郵便で送付しましょう。

催告書を送付して、届けたことが明確な場合は時効を6か月間ストップできるのです。

しかし、何もせず6カ月が過ぎてしまうと意味はありません。

猶予を得たら、きちんと訴訟や支払督促の準備をしておきましょう。

強制執行が行われた場合は、手続きが終わるまで時効はストップし、全額を回収できなかった場合は時効がリセットされます。

しかし、債務者側に支払う意思がある場合は、債務を承認してもらうのが一番簡単な方法です。

債務の承認は、口頭だけでは意味がありません。

きちんと債務確認書という書類を作成したうえで、文書として証拠を残しておいてください。

一部だけでも支払ってもらえれば、同じく承認したことになります。

まとめ

企業間での取引は、代金を直接支払うのではなく売掛金として後日支払うのが一般的ですが、売掛金には未回収リスクがあります。

回収が多少遅れる位であれば影響は少ないのですが、何カ月も未回収になってしまった場合は大きな影響を受ける可能性があります。

特に、資金が少ない中小企業やベンチャー企業にとっては、死活問題でしょう。

時効があることにも注意して、早急に対処しましょう。

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