中小企業が震災対策としてのBCPに取り組むには?
近年、震災をはじめとして様々な災害が増えています。
震災が起こると物流網がストップしてしまうことも多いため、抱えている在庫があまり多くない中小企業は、あらかじめ備えておかなければ事業を継続することができないかもしれません。
中小企業は、震災対策としてのBCPにどう取り組むべきでしょうか?
BCPの重要性?
日本といえば、地震大国として有名です。
また、地震に伴って津波が起こることもあり、台風も毎年襲来しています。
火山も多く、時折噴火することもあるのです。
地震と津波によって多くの被害をもたらした東日本大震災から10年以上が経過しましたが、2024年1月には元旦から能登半島地震が起こるなど、大きな地震は何度も起こっています。
企業は、いつ震災に見舞われてもいいように、BCPに取り組んでおく必要があるでしょう。
BCPは、「Business Continuity Plan」の略称であり、日本語では「事業継続計画」といいます。
BCPは、事業を継続するための対応について対策しておくためのもので、災害などが起こって通常の業務に支障が出て継続できなくなる可能性を下げるために、災害による損害を最小限に抑えるとともに、事業を早急に復旧して継続するにはどうしたらいいのか、対応についてあらかじめ計画しておいて対策を練っておくものです。
BCPは、特に法律で取り組んでおく義務があると定められているわけではありません。
しかし、中小企業庁ではいつ災害などの緊急事態が起こったとしてもいいように、常に備えておくことが望ましいと運用指針を出しています。
いつ起こるかわからないため、常に備えておく必要があるのです。
BCPに取り組むうえで重要な課題の1つが、電力の調達です。
震災が起こるとライフラインが寸断されてしまい、停電も広範囲で起こることが多く、電柱が倒壊した場合などは、特に復旧するまで時間がかかります。
場合によっては、完全に復旧するまで1週間以上かかるかもしれません。
中小企業の中で、非常用の発電機を備えているところは少ないでしょう。
震災で電力が停止してしまうと、まず業務に必要なパソコンが使えなくなってしまいます。
震災で、パソコンなどのハード自体が故障することもあるでしょう。
システムが稼働停止となり、データが失われてしまう可能性もあります。
固定電話やファックスも通じなくなり、社外との連絡もできなくなるでしょう。
オフィスは空調機器が停止していて、セキュリティも動きません。
食品など、商品によっては停電中に廃棄することになる可能性もあります。
特に、冷凍食品などは出荷できる状態ではないでしょう。
業務を停止することになるだけではなく、大きな損失となって中小企業は存続の危機になるでしょう。
現在、電気を一切使わずにできる業務はほとんどありません。
電気が止まった時の対策ができていなければ、損失は膨らみ続けるだけなのです。
また、利益を逸失してしまうことにもなります。
停電対策の重要性
日本では、地震や豪雨、台風などの自然災害が頻繁に起こり、停電が伴うことも珍しくありません。
東日本大震災以降の自然災害による、停電期間や被害総額はどのくらいになるのでしょうか?
災害名 | 発生日 | 停電期間 | 被害総額 |
東日本大震災 | 2011年3月11日 | 約1週間 | 約16兆9000億円 |
熊本地震 | 2016年4月14日 | 約1週間 | 最大4.6兆円 |
鳥取地震 | 2016年10月21日 | 1日 | 約1億6000万円 |
大阪北部地震 | 2018年6月18日 | 3時間 | 約1800億円 |
西日本豪雨 | 2018年6月28日 | 約1週間 | 約1兆2150億円 |
北海道胆振東部地震 | 2018年9月6日 | 約1週間 | 約1620億円 |
令和元年8月の前線に伴う大雨 | 2019年8月27日 | 約15時間 | 約213.5億円 |
令和元年台風第15号 | 2019年9月5日 | 約3週間 | 約505億円 |
令和元年台風第19号 | 2019年10月6日 | 約2週間 | 約3961億円 |
令和2年7月豪雨 | 2020年7月3日 | 5日 | 約1900億円 |
2021年福島沖地震 | 2021年2月13日 | 6時間 | 不明 |
能登半島地震 | 2024年1月1日 | 3週間以上 | 不明 |
震災に見舞われた場合、電柱が倒れているかどうかで復旧にかかる期間は大きく異なります。
広範囲で電柱が倒れてしまった場合は、復旧にかなりの時間がかかるのです。
中小企業で震災対策をする場合、まずは電源の確保が第一となるでしょう。
会社全体で使用する電力量を把握し、必要な出力を持つ発電機を用意しておくことで、災害時の停電による影響を最小限にすることができます。
発電機は、ガソリンやガスボンベなど、いくつかのタイプがあります。
特に出力が大きいのはガソリンタイプなのですが、使用時は騒音や排気ガスなどの問題があるため、注意して使用しなくてはいけません。
近年増えているのが、太陽光発電と蓄電池を備え付けておくことです。
普段から会社の電力として使用し、電気代を節約することもできます。
有事の際も、設備が故障せず太陽が出ていれば、発電できるのです。
発電機を用意しておいても、ガソリンなどの燃料に限りがある以上使うことができる期間は限られてしまい、震災が起こると調達が難しくなることもあります。
しかし、太陽光発電はそのような限度がありません。
蓄電池を併用することで、日中だけではなく夜間でも電力を使用できます。
また、貯めておくことで天候に左右されることなく電力を使用できるでしょう。
普段からも、自家消費で電力会社の電気使用量を削減して電気代の節約ができます。
太陽光発電設備、および蓄電池を導入する際は、国からの補助金を受けられることがあります。
また、税制優遇なども受けられるため、導入にはコストがかかるもののある程度は軽減できるのです。
自家消費型太陽光発電を導入した場合、ピークカットへの貢献も可能です。
ピークカットは、1日の中で最も電力を多く使用する時間帯に発電した電気を使うことで、最大電気使用量を引き下げて電力会社の料金を引き下げることです。
太陽光発電設備はおおよそ30年使用できるといわれているのですが、導入コストは10年ほどで回収できます。
震災への備えだけではなく、固定費の削減にも効果的です。
まとめ
中小企業は、震災が起こった時の備えとしてBCPに取り組まなくてはいけません。
震災に備えた設備が整っていないことが多いため、事前に対策をしておかなければ事業活動を停止することになるかもしれないのです。
特に注意が必要なのは電力の確保で、事前に発電機を設置しておくか、ソーラーパネルを設置して太陽光発電と蓄電池を組み合わせ、災害時も電力を確保できるようにしておくのがおすすめです。