医師、公認会計士、建築家等の職業人が、業務遂行で起こしてしまう法律上の損害賠償責任

医師や公認会計士、建築家などの職業人の業務は、専門性が高いため業務を他の職業が代行するのは困難です。

業務遂行における責任は重いため、法律上の損害賠償責任を負うケースも珍しくないのですが、具体的にはどのようなケースが考えられるでしょうか?

職業人が法律上の損害賠償責任を負うケースについて、解説します。

目次

専門の職業人の業務とは?

職業には、一般職と専門職があります。

一般職は、特に資格が必要とされないような職業で、専門職は国家資格などが必要になる職業です。

例えば、経理や営業、事務などの仕事は基本的に資格が必要とされないため、一般職といえるでしょう。

しかし、技士などの場合は資格がなければできないため、専門職です。

専門職は、一般的なものだけでも弁護士、公認会計士、司法書士、行政書士、建築士などの士業と呼ばれる職業、医師、看護師、教師など免許が必要なもの、宅地建物取引士やLPガス販売事業者などの職業があります。

専門職の定義は、業務について一般原理が確立していて技術を習得するのに長期間の高度な教育や訓練が必要なこと、免許・資格制度があること、業務団体があること、営利性が排除されていること、他者の圧力から独立性が保持されていることの5つの要素を満たしていることといわれています。

専門の職業人が携わる仕事は、難易度が高く一般職では代わることができない、責任が重い仕事です。

最もわかりやすいのは医師や看護師で、人の命を預かる仕事であり他の職業の人では代わりになることができません。

弁護士や司法書士なども、職業によってできることが法律上定められているため、各々の職分を守ったうえで専門的な業務に携わることとなります。

司法書士よりも、弁護士の方が職分は広いのです。

法律上の損害賠償責任とは?

専門的な職業人は、業務を遂行する上で法律上の損害賠償責任を起こすことがあります。

しかし、法律上の損害賠償責任とはどのようなものか、よくわからない人もいるでしょう。

法律上の損害賠償責任というのは、主に不法行為と債務不履行によって生じる損害賠償責任のことをいいます。

民法や商法、特別法などに従って、損害賠償を請求されてしまうのです。

例えば、債務不履行は民法に定められた債務不履行の他、商法の旅客運送や寄託、特別法の借家法や信託法などに定められた債務不履行に類する項目に従って、法律上の損害賠償責任が生じることとなります。

不法行為は、民法における一般の不法行為責任、並びに特殊な不法行為責任に基づいて、責任を負うこととなります。

また、製造物責任法や国家賠償法、原子力損害賠償法なども、不法行為の根拠となることがあります。

民法に基づく一般の不法行為責任は、故意や過失で他人の権利を侵害することで生じます。

個人でできる注意で防ぐことができたはずなら、過失となります。

特殊な不法行為の場合は、監督義務者の責任や使用者責任、土地工作物責任、共同不法行為責任などに関して、特別に定められています。

各規定が適用される要件が限定される代わりに、一般の不法行為よりも過失責任主義などの成立要件が緩和されているのが特徴です。

全体的に、財産権や人格権などの他人の権利を侵害した場合に、賠償責任が生じるとされています。

財産権は物件的なものと債権的なものがあり、人格権は身体に関するものと精神に関するものがあります。

職業人の法律上の損害賠償責任に備えた保険

専門の職業人の業務は特殊なものも多いため、業務遂行によっておこる法律上の損害賠償責任は請求額が高額になってしまうことも珍しくありません。

万が一の事態に備えて、保険に加入している人も少なくないでしょう。

専門の職業人の業務遂行に関わる損害賠償責任に備える保険は、全体的には専門職業人賠償責任保険といい、さらに職業によって細分化されています。

内容は、資格や業務の特性によって異なります。

例えば、弁護士の場合は弁護士賠償責任保険、行政書士は行政書士賠償責任保険と分けられていて、職業別の団体保険制度で運営されています。

名前だけではなく、保険制度としても細分化されているのです。

保険の内容としては、業務遂行に伴って法律上の損害賠償責任が生じた場合に、保険金を支払うというものです。

具体的に保険金が支払われるケース、保険金の額は、契約内容によって異なります。

保険の仕組みとしては、一般の賠償責任保険の普通保険約款に、専門職業人ごとの職業危険特別約款を加えたような構成となっています。

一般の保険に、専門職業人用の特約を付けたような賠償責任保険といえるでしょう。

なぜかといえば、専門職業人の場合は一般の職業よりも業務内容が専門的である分責任も重くなっているため、万が一の時に起こる損害賠償責任が一般の保険ではカバーしきれない範囲になることもあり、金額も大きくなる可能性が高いからです。

また、債務不履行における損害賠償責任保険は、結果損害が発生した場合の損害を填補内容として、履行請求権に変わる損害賠償責任については対象に含めないという考え方もあります。

不完全履行については、瑕疵型と拡大損害型に分けて考えることができるのですが、損害賠償責任保険が填補するのは拡大損害型のみ、ということです。

業種によって、考え方は異なるでしょう。

以前はあまり注目されていなかった専門職業人賠償責任保険ですが、近年は損害賠償責任を問われるケースも増えていることから、保険の有用性に注目されています。

まだ加入されていない場合は、一度検討してみてください。

まとめ

専門職といわれる、国家資格などが必要で専門性の高い業務を遂行する職業人は、業務遂行によって法律上の損害賠償責任を問われてしまうことがあります。

専門性が高い業務を行っているため、損害賠償責任が生じた場合の賠償額は高額になりやすい傾向があるため、万が一にも賠償を求められてしまうと少なくない負担となってしまうでしょう。

損害賠償責任を問われてしまった場合に備えて、保険への加入も検討しましょう。

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