不当解雇などによる企業の賠償責任を考える

従業員を解雇することになった時、正当な理由での解雇でなければ不当解雇になってしまい、企業は賠償責任を負うことがあります。

他にも、従業員に対する無意識の言動などが、不当行為に当たるケースも増えています。

企業の賠償責任は、どのように考えるべきなのでしょうか?

また、どのように対策するべきでしょうか?

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不当解雇による企業の賠償責任

企業で働く従業員が退職する時は、自主的に退職する人もいれば、会社から退職を勧告される人もいます。

しかし、自分の意思とは関係なく解雇される人もいるのです。

従業員の解雇については、法律で条件が定められています。

要件に当てはまる場合は仕方がないと言えますが、中には要件を満たしていないのに解雇されてしまう人もいます。

要件を満たしていないのに解雇するのは、不当解雇といいます。

不当解雇にも要件が定められていて、解雇されたことで精神的な損害が生じていて、不法行為となる要件を満たしている場合は、解雇された労働者が会社に対して慰謝料を誠意休することができます。

ただし、不当解雇が不法行為に当たるというわけではなく、違法性が著しい場合でなければ慰謝料の請求が認められないこともあります。

当てはまるかどうかは、事前に確認しておきましょう。

不当解雇されたことで慰謝料を請求する場合、金額の相場は20~50万円となっています。

内容次第で変動するため、あくまでも目安と考えてください。

慰謝料を請求するには、解雇されたことに対する不法行為性を主張し、立証する必要があります。

故意や過失により違法に相手の権利を侵害したことで損害を生じさせた場合、不法行為となるのですが、不当解雇がすべて当てはまるわけではありません。

不当解雇の不法行為に基づく損害賠償が認められたポイントとしては、会社側(被告)が解雇を回避する手段を全く検討せずに実行し、解雇自体も突然であったため原告の請求が一部認められたと考えられます。

不当解雇と併せて、セクハラに対する不法行為に基づき慰謝料請求が認められるケースもあります。

泣き寝入りをせず、きちんと証拠を用意して慰謝料をもらいましょう。

不当解雇などの慰謝料請求に備えた保険

従業員の不当解雇やハラスメントなど、不法行為があったことで慰謝料や損害賠償を請求された場合、金額によっては企業にとってかなり大きな負担となり、場合によっては事業を継続するのが困難になってしまうこともあるでしょう。

万が一に備えて、雇用慣行賠償責任保険に加入しておくことをおすすめします。

雇用慣行というのは、法令等の定めによらず労働者の働き方や賃金設定などの雇用分野に根付いた慣習を指したものです。

保険に加入しておくと、不法行為と認められて慰謝料を請求された場合に、保険金が支払われるのです。

現在の日本では、新卒で入社して定年まで勤め続けるという生涯雇用の概念がなくなり、より良い労働条件を求めて転職する人が増えています。

正社員だけではなく、派遣社員、パート、契約社員などの非正規雇用で働く人も増えているのです。

生涯雇用の時代であれば、優先されるのは会社を守ることという考えが多く、ハラスメントという考え方もなかったためパワハラなども当たり前でした。

しかし、現在は従業員それぞれの生活が優先となるため、会社から不利益を被るようなことがあればためらいなく損害賠償を請求するのです。

民事の労働関係の訴訟は、1989年には640件だったのが、30年後の2019年には3,615件と、5倍以上に増えています。

また、2006年から始まった労働審判制度は、2006年に877件だったのが、2019年には3,665件に増えています。

労働審判制度は、労働紛争が平均して2カ月半という短い期間の審理で解決する見込みがある制度であり、新たな制度が定められたことで労働者は会社に対して責任を追及しやすくなったのです。

つまり、会社が訴えられる可能性も高くなっているということです。

損害保険の一種である雇用慣行賠償責任保険は、契約する際に保険金額の上限が定められ、実際の損害額に応じて保険金が支払われます。

不法行為に関する訴訟では、請求される金額が数十万円から数千万円と大きな幅があり、同時に複数人が訴えるようなことがあれば請求額も人数分増えてしまいます。

損害賠償が認められた場合、金額次第で大きな負担となるでしょう。

また、労働紛争を解決するためには弁護士など、専門家に助力してもらう必要があるため、依頼費用もかかります。

保険に加入することで、弁護士などに支払う費用も含めてカバーできるのです。

保険会社によって、保険金の支払方法は異なっていて、中には一定額を自己負担するよう設定されているケースもあります。

また。1件につき100万円までなどの上限が設けられることもあるため、契約時はしっかりと確認してください。

保険料は、保険金の支払限度額の他、加入する保険会社や会社の業種、規模などで異なるため、複数社の見積もりを取ることをおすすめしあす。

保険金は年間数万円ということもあれば、100万円を超えることもあるのです。

保険に加入する際は、自社がどのような損害賠償リスクに備える必要があるか、優先順位を考えて保険金がどのような要件で支払われるか、保険会社はどこがいいかをよく比較検討しましょう。

業種によって、損害賠償責任をどのような時に請求されてしまうのかが異なります。

飲食店などは、食中毒によって損害賠償を請求されるリスクが常にあるでしょう。

建設業なら、工事中の事故による損害賠償には常に備えておかなくてはいけません。

雇用慣行賠償責任保険に加入する際は、企業向けの損害保険に特約を付けることになります。

保険会社の担当者に、自社がどのようなリスクに備えるべきかを相談して、保険に加入するかどうかを決定しましょう。

まとめ

企業を経営する上で、不当解雇をはじめとした不法行為などを行った場合、損害賠償責任を負うことになるケースがあります。

企業が不法行為に該当する行動をした場合に、行動の結果与えた損害を賠償するというもので、不当解雇の場合は数十万円の慰謝料ですが、不法行為の内容によっては数千万円に及ぶこともあるのです。

損害賠償請求が不安な場合は、雇用慣行賠償責任保険に加入することをおすすめします。

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