工場で火災が発生したことによる休業リスク
一般の建物と比べて、工場は火災が発生する条件が揃っていることが多いため、火災が起こる可能性は少なくないでしょう。
工場で火災が発生すると操業が停止してしまうため、修繕が終わるまで休業せざるを得なくなってしまいます。
休業となってしまった場合は、どのようなリスクがあるのかを解説します。
工場が火災に見舞われた場合の被害
工場では様々な製品を製造したり加工したりしているのですが、ほとんどの場合大型の機械を使用し、大規模な作業をしているでしょう。
もちろん、安全性には十分配慮されていると思います。
機械に関しても、定期的に点検やメンテナンスを行っていて、使用する原材料の配置なども製造がスムーズに行えるだけではなく、危険がないように考えられています。
しかし、老朽化はどうしても避けられません。
工場自体が老朽化して壁の一部が壊れ、内部の配線の被覆が破れて付着した埃が発火したという事例もあります。
また、機械の不調によって火花が飛び、引火する可能性もあるでしょう。
工場は、同一地区に複数まとまって建てられているため、他の工場から引火してしまうこともあります。
特に、爆発物などを扱っている工場が火災に見舞われると、周囲への被害も大きくなってしまうでしょう。
火災が起こってしまうと、様々なリスクが生じます。
まず、工場は休業せざるを得なくなるのですが、受けた被害を修復する必要があるため、自社の責任で火災が起こった場合は、かなりの費用が必要となるでしょう。
特に、大型の機器は種類によっては数億円するため、中小企業の工場であればすぐに買い替えるのは難しいでしょう。
保険などに加入していなければ、銀行からの融資が命綱になるかもしれません。
もし、自社の工場で起こった火災で、他の工場に被害を与えてしまった場合は、賠償責任を負うことになります。
工場の火災には、失火法が適用されないのです。
失火法では、個人の住宅の火災が他の住宅に被害を与えた場合でも、賠償責任を負うことはないと定められています。
しかし、工場内で発生した火災が近隣の建物に被害を与えた場合は失火法が適用されないのです。
どんな休業リスクがある?
火災によって工場が被害を受けてしまった場合は、休業せざるを得ないでしょう。
しかし、休業するとなった場合は、様々なリスクが生じる可能性があるのです。
工場で火災が起こった場合の休業リスクとは、何でしょうか?
何より心配となるのは、社員に対する賃金支払いです。
民法では、労働者が仕事をしなければ賃金は発生しないものの、会社の責であれば全額支払われると定められています。
会社の責となるのは、会社の故意や過失、もしくは信義則上で同様に考えるべきものだとされています。
会社の責によって休業となった場合は、賃金を支払わなくてはならないのです。
一方、労働基準法では使用者の責任で休業になった場合、休業期間中は労働者に対して平均賃金の6割以上を支払わなくてはならない、と定められています。
利用者の責任となるのは、企業の経営者が不可抗力だと主張できないことです。
他の工場の火災に巻き込まれた場合は、不可抗力に該当します。
事業の外部から発生した事故や、事業主が最大限注意していても回避できない事故などが不可抗力として認められます。
また、就業規則に定めがあって労使間で合意があれば、民法によって定められている規定は任意規定なので排除できます。
また、就業規則に平均賃金の6~10割の賃金を支払うと定めてあれば、民法上の義務は果たしたことになります。
つまり、火災が起こった工場ではまず修繕の必要があるため、修繕費用が必要となります。
さらに、一定の条件を満たしていなければ休業中の賃金の一部、もしくは全額を支払う必要があるのです。
民法上の定めで考えると、自社で火災が発生した場合は多くの場合会社の責に帰するべき事由となる可能性が高いため、休業となった労働者に対しては賃金を通常通り支払う必要があります。
ただし、法律上定められている十分な防火処置を施していて、安全性が十分に保証されていれば、会社の責任とは言えないかもしれません。
詳しい原因を調べたうえで、責任があるかを判断されることとなるでしょう。
労働基準法における休業手当の支払いについて、民法と同じように使用者の責による休業では支払わなくてはならない、と定められていますが、民法と比べて労働基準法では使用者の責の範囲が広くなっています。
民法では、十分な備えをしていれば問題なかったのですが、労働基準法の場合は不可抗力以外であれば休業中の賃金を支払わなくてはならないと定められているのです。
不可抗力であると認められるのは、2つの要件を満たしている場合です。
1つ目の要件は、原因となる事故が事業の外部から発生したということです。
要するに、事業とは無関係のところから発生した事故であれば、不可抗力と認められるということになるのですが、該当するかは行政介錯に従うものとされます。
2つ目の要因は、事業主が経営者としてどれだけ注意をしていても避けられなかった場合です。
注意のしようがあった、想定していれば避けられたという場合は、不可抗力とは認められないのです。
例えば、自社の工場からの出火は、防火体制を十分に整えていれば避けられる可能性が高いでしょう。
しかし、外部から火をつけられた場合は、工場の外に可燃物を置かないというのが第一になるでしょう。
隣接する他社の工場からの出火による被害であれば、自社にはまず責任がありません。
きちんと防火体制が整っていたのであれば、休業補償も必要はないでしょう。
しかし、従業員の生活を考えると、支払ってあげたいと考えるかもしれません。
休業補償保険などに加入しておけば、工場の休業に伴う減収や従業員の休業補償などを補填することができるでしょう。
工場で火災が起こった場合の休業に備えて、保険への加入を検討してみてください。
まとめ
工場は、何らかのきっかけで火災が起こる可能性は十分に考えられるため、防火体制などは常に整えておく必要があります。
火災が起こったことで休業となった場合のリスクは、火災の原因が自社か、もしくは他者かで異なります。
従業員の休業中の賃金が必要かどうかも、原因によって異なるのです。
万が一の事態に備えて、休業補償保険などへの加入も検討しておきましょう。